Solyuの気まま日記

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パズル『クロスウォール』の考案・試作

先日Twitterでも公開しましたが、『クロスウォール』というパズルを作りました。今回の記事では、このパズルについて記そうと思います。

 

1 クロスウォールとは?

クロスウォールは、縦横に線を引いて1つの輪っかを作るパズルです。詳しいルールは、以下のツイートをご覧下さい(例題に加えて、幾つか問題も載せています)。

 

2 クロスウォールの特徴

このパズルの特徴的な点は、線が自己交差できることでしょう。大抵の線を引くパズルでは、一般的に線の自己交差は禁止されています(但し、領域分割の為だけに線を引くパズルは除きます)。Puzzle Square JPで10件以上投稿されているものを対象に調べてみたところ、自己交差できるパズルは6件/59件と結構な少数派でした。それぞれ簡単に説明すると、

  • アイスバーン系(アイスバーン/バーンズ/アイスローム)
    1つの折れ線(あるいは輪っか)を作る。線は『アイスバーン』と呼ばれる水色マスでのみ交差可能。アイスバーンの上で線を曲げることはできない。
  • リフレクトリンク
    1つの輪っかを作る。輪っかは自己交差マークのあるマスでのみ自己交差する。
  • パイプリンク
    1つの輪っか(あるいは折れ線)を作る。線は自己交差可能で、全てのマスを少なくとも1回通る必要がある。
  • クロスブリード
    同じ数字どうしを線で繋げる。線は自己交差も含めて交差可能で、全てのマスを少なくとも1回通る必要がある。

こうして見ると、既存のパズルではどれもマスの中央を通るように線を引いていることが分かります。これに対してクロスウォールは、マスの境界線を通るように線を引きます。これはクロスウォールのオリジナリティと言っても良いのではないでしょうか。

 

クロスウォールのオリジナリティはもう1つ有ります。それはマスの右下に小さく書いてある数字、通称『内側度』あるいは『内陸度』と言われるものです。
この数字は「そのマスから外に出るまでに何回輪っかの線を横切るか」を表すもので、いわゆる『領域の内側・外側』の拡張版と言えるでしょう。

内側・外側が関係するパズルはそれなりに存在し、特に全体で自己交差のない1つの輪っかを作るパズルと相性が良いです。しかしクロスウォールの内側度2~のようなヒントが意味を持つには、輪っかを複数にするか、輪っかの自己交差・枝分かれを許容しなければなりません。*1

では、クロスウォール以外にこのようなヒントを持ったパズルが存在するかというと、線を引くタイプのパズルでは見当たりませんでした。*2また、領域を分割するタイプのパズルも、基本的にその領域だけを見てわかる情報(面積・形状など)がヒントになっていることが殆どで、内側度のように全体に左右される情報は殆どありませんでした。*3

というわけで、クロスウォールは2つもオリジナリティを持った独特なパズルと言えるでしょう(自画自賛をお許し下さい)。

因みに、マスの中央に大きく書いている数字は、その領域の面積を表すものです。面積がヒントになっているパズルは多く有り、有名なものでは『四角に切れ』『フィルオミノ』辺りが該当します。これはオリジナリティというよりは、既存のパズルとの類似点に近いでしょう。

 

3 クロスウォールができるまで

まず、『1つの輪っかを作る・自己交差OK』というアイデアは最初期の時点でありました。内側度のヒントも、上のアイデアを活用する過程で自然に出てきたもので、ここまではほぼ固まっていたと言ってよいでしょう。

クロスウォールのルールを決めるにあたって最も悩んだのが、内側度以外のヒントを何にするかです。

先に、他のルール・ヒントについて考えます。

  • 線は輪っかになる(自己交差OK)
    これは各格子点から偶数本の線が出ていることをチェックすれば良いです。かなり局所的なヒントです。
    とはいえ、全体で輪っかになれば良いので、多少の遠回りもでき、そのため自由度はそれなりに有ります。
  • 全体で1つの輪っかになる(交点では直進)
    これは全体を見る必要が有ります。角の面積1_内側度1など、局所的にも使える場面は有りますが、基本的にはかなり大域的なヒントです。
  • 内側度
    これも大域的なヒントになります。特に、中央に近いマスでは周りの状況によって内側度が左右されやすくなり、局所的とは言い難くなります。

こうして見ると、答えの盤面に比べて多少の遠回りをしても、『ルールに沿わなくなる・ヒントの数字が変わる』などで矛盾することがそこまで起こらないことが分かります。これでは答えの盤面を1つに決められず困るので、何か別のヒントを加えることにしました。

最初に思い付いたのが、スリザーリンクの『このマスの周囲に輪っかの線が何本あるか』です。自己交差が可能なので、スリザーリンクにはない「4」が出てくるのも興味深いポイントです。そこで、早速制作に取り掛かったのですが……

結論から言うと、諦めました。理由は、ヒントが局所的すぎたことです。自己交差OKの輪っかはかなり自由度が高く、周囲の線の本数というヒントだけでは多少の遠回りを上手く抑えきれなかったのです。

結果、現在の中央の数字のように『面積』をヒントにすることで落ち着きました。これによって多少の遠回りも「面積が異なる」という区別ができるようになり、答えの盤面を一気に絞れるようになりました。また、面積1など、中央に有っても取っ掛かりになりやすい所が出来たというのも大きな利点です。

 

4 クロスウォールの試作品

以上の紆余曲折を経て、初めて制作したものがこちらです。

(下リンクより挑戦できます)

tinyurl.com

宜しければ、解いてみて下さい。ここまでお読み下さり、有難う御座いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:逆に言えば、内側度が0か1しかないからこそ、内側・外側という分け方で十分なのだとも言えます。

*2:先程と同様に、Puzzle Square JPで10問以上投稿されているものを対象にしました。

*3:Puzzle Square JPで10問以上投稿されているパズルを対象にしたところ、条件に合いそうなものはヤジタタミの数字とVoxasの丸の2つだけでした。