Solyuの気まま日記

Solyuの思ったことや考えたことをまとめます

並行パズル邂逅記 終章

11.    大団円


そこは、雲の中のような景色。白で囲まれた幻想的な景色。
ここが、世界の境界線であるらしい。
「ここに、元の世界への扉を開く、『最後のパズル』が有るはずです」
その言葉を信じ、二人で歩き続ける。程なくして、地面に落ちているパズルを見つけた。
しかし、それを見た私は一瞬の思考の後、驚愕することとなる。
――自分が読める文字。これはアルファベットではないか。
そしてその隣では、デコがアルファベットを神妙な面持ちで眺めていた。
「これは、文字なのでしょうか……私には分かりません」
そして、もう1つおかしな箇所が有る。
「この右の図は、解答でしょうか?何故、問題のすぐ隣に有るのでしょう……」
そこで、私はさらに先に問題が浮かび上がっていることに気付く。
そこにも似た様な図が有るのを見て、私はあることを悟った。
――この出題の仕方は、Instructionlessに違いない。

 

Instructionlessは、例題とその解答からルールを推測し、それを元に与えられたパズル群を解く形式である。例題には与えられた解答以外の解答が無いという一意性も有り、ここからルールが導けることも多い。
その性質上、どんなパズルが出題されるかは、実際に見てみるまで分からない。解答方式すらバラバラなことが殆どである。

《例題/例題の解答》

元の世界の言葉を用いているが、説明らしきものがない。この世界の住人であるデコがルールどころか、パズル名すら解読できない。それはつまり、説明そのものが存在しないことを指すのだろう。
奇妙なものだ。境界線にあるパズルは、両方の世界の住人にとって『平等』らしい。
元の世界に戻る為、最初で最後の解読作業が始まった。

Sample

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The Final Puzzle

puzsq.logicpuzzle.app


――終わった。これが本当に、最後なのだ。息が漏れ、力が抜けていく。
「――おめでとうございます。お客様とは、ここでお別れのようです」
デコの姿が、いや視界に映る全てが、薄くなっていた。光に溶け込んでいく。
「お客様は、私の名前のデコがどういう意味なのか、御存知でしょうか?」
知らない、と答える。結局、ここまででデコの正体は謎のままだった。
「離れていった、共に有ったもの。それが、私の名前の意味だそうです。
どうしてこんな名前になったのかは、忘れましたが――これだけはずっと、覚えています。
ここは、有ったかもしれないパズルが埋もれる場所。いろいろなアイデアの繋ぎ違いで生まれなかった、そんなパズルが飾られる場所。
近くにあるのに、何処にもない――そんなパズルが住まう場所なのです。
良い体験が出来ましたか?ここの住人として、楽しんでもらえたなら幸いです」
ありがとう、その一言が最後の言葉になった。
全ては白い光に覆われ、意識すら失われていった。


目を覚ますと、見覚えのある画面が目の前に有った。そして、目の前には昨日解き終わったパズル。
――あの体験は夢だったのだろうか?それにしては妙に現実味が有り、そしてはっきりと記憶に残っている。
並行世界のパズル。それはもう、近くにはないが、確かに何処かに有ったのだ。

四隅の数字を合計すると面積になる、四隅に切れ。
様々な情報で出入りする線を表す、Castle Walker。
角の黒丸に合計を合わせる、加算コーナー。
蛇によって部屋を指示通りに分ける、~やわけ。
数字がその上のループの面積を表す、フェンスミノ。
1~8マスの領域1つずつに分ける、ハニーテリトリー。
銀河内の星の配置を対称にする、対称星。
鏡台を配置して月以外を照らす、美術回廊。
赤と青が重なり合って紫になる、RBPループ。
ワープゲートで同じ数字同士を結ぶ、ナンバーワープ。

そして、最後のあの、Instructionlessという覆面を被った、名前の無いパズル。
ループを描き、言葉を繋ぐ。そんなパズルだった。そのとき、とある単語が浮かび上がる。

――『大団円』。

きっとあのパズルには、この名前がふさわしいであろう。

 


Fin.

 

 

 


作品内に登場する全てのパズルは、今や現実に存在するパズルです。
これからは、あの世界に入らずとも、出会うことができるでしょう。
それでも、もっと沢山の、近くにあるはずのパズルを知りたいのであれば……
きっとあの奇妙な住人たちが、夢の中へと会いに来るでしょう。