Solyuの気まま日記

Solyuの思ったことや考えたことをまとめます

並行パズル邂逅記 第5章

5.    隣人の顔も霞む


蛇の背中に乗ってから、どれくらい時間がたっただろうか。周囲を深い霧で覆われ、時間感覚さえ失われている。それにしても、この霧の濃さ……尋常ではない。
「蛇さんも、行き先を見失っているようですね……」
デコは不安げにこちらを見やる。その顔も霧のせいかぼやけて見える。
「――これはもしかすると、パズルの仕業かもしれません」
パズルの仕業。Puzzleという英単語には人を悩ませるものという意味があるらしいが、今まさにそれに直面している。
「どんなパズルなのでしょう?想像するに、お客様の知っているパズルと似たものであると思います」
そうは言われても、皆目見当もつかない。
「頑張って、少し解析してみますね……
隣り合う……異なる……?」
さすがにそれだけでは、領域パズルだろうとしか推測できない。
「もう少し……数字……面積……」
――違うかもしれない。数字が面積、隣り合う領域同士は異なる……
それはもしかして、フィルオミノのことではないだろうか。

 

フィルオミノとは、盤面の各マスに1つずつ数字を配置するパズルだ。
数字は必ず、そのマス分の塊になる。例えば、3は3マスだけ縦横に繋がる。
異なる数字同士に境界を引けば、こんなパズルだと解釈もできる。つまり、各領域に含まれる数字はその面積と同じであり、同じ面積の領域同士は隣り合わない。

 

これはフィルオミノかもしれない。そう思ったとき、突然霧が形を変え、部分部分だけ濃くなった。
――やはり、フィルオミノとは似ているが異なるパズルなのだろう。数字が複数混ざったマスがある上に、0まで含まれている。
「これは、フェンスミノという名前なのですね……初めて見ました」
デコの表情が驚きに満ちるのが、霧の中ではっきり見えた。

《例題》

「ルールをご説明致しましょう。

ルール1:マスの中央を通るように縦横に線を引き、盤面に幾つかのループを描きます。
ルール2:どのループも自己交差しません。ループ同士は頂点を共有できますが、辺を共有したり交差したりしてはなりません。また、また、ループの線で二重に囲まれる個所を形成してはなりません。
ルール3:数字は、そのマスを通るか囲むループが囲んでいる面積を表します。2つのループが通る場合は、両方の面積を記します。ループが通らない場合、0で表します。?が有る場合、そこには1以上の数字が入ります。
ルール4:ループが通らないマス同士は隣り合いません。
ルール5:同じ面積を囲むループ同士は共有点を持たず、また双方の頂点同士は隣り合いません。つまり、いずれかのマス目の辺の両端となりません。


これはフィルオミノ……の魔改造だろうか。数字を記入するパズルだったはずが、ループを描くパズルになっている。
いずれにしてもルールが分かったなら、今度は解く時間だ。得体の知れない世界に、光明を見出そう。

 

《このパズルは、後ほどPuzzle Square上でルール登録をする際、マスの中央と格子点とが入れ替わりました。その為、Puzzle Square上でのルール説明とは異なる表現が幾つかあります。
元のルール文は作者コメント欄より確認できますので、宜しければご活用下さい。》

Sample

puzsq.logicpuzzle.app

 

 

《例題の解答/解答のイメージ図》

 

 

パズルを解き終えると、それは透明な箱に変わった。恐る恐る蓋を開けると、それは付近の霧を吸い込み始めた。少しは視界が開けたが、まだ全てを吸い取るには小さすぎる。
より多くの容積を確保するため、次のパズルへと取り掛かった。

 

Q1

puzsq.logicpuzzle.app

Q2 《08/14公開》

puzsq.logicpuzzle.app

Q3 《08/15公開》

puzsq.logicpuzzle.app


パズルが解き終わり、それは一際大きな箱と変化する。そしてミミックのごとく突然口を開き、あたりの空気を手当たり次第に喰らい始めた。
「うわあ……!すごい勢いで霧が吸い込まれていきます」
凄まじい風圧の中、どうにか目を開けてみると、デコの言う通り霧がたちまち晴れていく。このパズルは、霧を囲う柵と変わったのだ。
再び、明るい世界が戻ってきた。――実に透き通って見える。空気は、こんなにも透明なのだ。
道を見つけた蛇が、勢い良く動き出す。涼しい風が頬を伝った。