Solyuの気まま日記

Solyuの思ったことや考えたことをまとめます

並行パズル邂逅記 第4章

4.    Elephant in the room, snake in the puzzle


目の前の景色が、延々と続くように見えた。
「中々遠いですね……道は合っている筈なのですが」
デコが手に持っている紙には、先程現れた地図が正確に写されている。どうやったのか尋ねてみると、「パズルなら何でも『コピー』できます」と返ってきた。お茶会でパズルを取り出してみせたのも、その応用なのだという。
私とデコの目線の先には、地平線しか区切ってくれない一直線の道が有った。気が付けば息が途切れ途切れになっており、この世界でも疲れはあるのだと実感させられる。
代り映えしない景色に嫌気がさしたのか、単純に疲労のせいか、目線は下を向いていた。すると、そこに何か動くものが現れる。
――蛇だ。びっくりして私は後ずさる。少しの間を置いてデコも蛇に気付き、私に話し掛ける。
「大丈夫です、お客様。この世界の蛇は、毒は持っていませんよ」
見ると、蛇は私たちをじっと睨んでいる。そして、足元の地面にパズルらしきものが浮かんできた。

《例題》

奇妙な出現の仕方だが、もうこれくらいでは驚かない自分がいる。
「これは……~やわけ、というパズルらしいですね。私も城の外のパズルは存じ上げません……ルールを解読してみます」
ニョロヤワケ……?と私は聞き返す。名前だけ聞くと、へやわけに似ている。そしてパズルを見てみると、確かに盤面が幾つかの部屋に分かれており、左上には数字が有る。

 

へやわけとは、予め与えられた部屋の中に黒マスを配置するパズルである。
黒マスは辺で隣り合わず、また盤面を分断しない。部屋の左上の数字は、その部屋の中の数字を表す。
そして、特徴的なルールが次…白マスが一直線に3部屋以上跨ってはならない、というものだ。
いわゆる三連禁である。このルールは、部屋が密集するほど重い制約となる。

 

へやわけに似たパズルといえば、Akichiwake(空き地わけ)の話を避けては通れないだろう。
こちらは部屋の左上の数字が、その部屋の中の白マスの塊の許容最大数を表す。
例えば3なら、3以下の白マスの塊は幾ら有っても良い(全て3未満でも良い)が、4以上はダメということだ。

 

だが、目の前にあるパズルは、その2つとも違う様相をしていた。左上に数字や?が複数ある部屋が有り、更に部屋とは関係なく丸い記号が何マスかに置かれている。
丁度そのとき、デコがルールを解読し終え、私に説明をしてくれる。


「お待たせしました、お客様。こちらがルールとなります。

ルール1:幾つかのマスを黒く塗り潰し、盤面に何匹かのヘビを描きます。
ここで、ヘビとは幅1の黒マスの列であり、自身と4方向で隣り合いません。
ルール2:ヘビ同士は4方向で隣り合いません。
ルール3:○の有るマスは蛇の両端のいずれかとなります。○以外に蛇の両端が有ってはなりません。
ルール4:太線で区切られた各領域を、部屋と呼びます。
数字は、その部屋の中の白マスの塊それぞれの面積を表します。?が有る場合、そこには1以上の数字が入ります。


これは驚いた。名前こそへやわけに似ているが、三連禁も無ければ黒マスの制約もまるで違う。Akichiwakeの方がまだ近いだろうか。だが、蛇が部屋を分けているという意味合いは確かに頷ける。
思考を巡らせる私の足元に、何か重みが圧し掛かる。蛇が待ちくたびれたようにこちらを見ていた。
「もしかすると、何か旅の手掛かりが得られるかもしれません。このままでも一向に進みませんし、リフレッシュ代わりに解いてみましょう」
そういう流れで、私はこのパズルを解くことになった。さて、この盤面の茂みの中、蛇たちはどう隠れているのだろうか……

Sample

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《例題の解答/解答のイメージ図》

 

 

パズルを解き、私は蛇に顔を向ける。不満そうには見えないが、まだ何かを欲していそうな顔だ。
そう思ったとき、地面に先程より大きな盤面が浮かび上がった。
蛇によれば、今まではチュートリアルであったらしい。さて、この『クエスト』をクリアして見せよう。

 

《一部の問題で○と数字とが重なっていますが、双方の意味は独立しております》

Q1

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Q2 《08/11公開》

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Q3 《08/12公開》

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全てのパズルが解き終わった。蛇のほうを見やると、満足そうな表情を浮かべている。
そして突然、その体が大きくなりだし、人を飲み込めるほどの大蛇へと変わった。蛇はゆっくりと背を向けると、こちら側を振り返りつつその場でとどまる。
私たちは意味を図りかねていたが、暫くしてデコが理解した。
「もしかして……乗っていけ、ということなのでしょうか……?」
確かに乗り物があるのならば、この先の道には心強い。蛇の背中に恐る恐る乗ると、それは少しの間をおいてゆっくりと動き出していた。
さて、この道の端は何処にあるのだろう。蛇の端が見えたのだ、きっとすぐ近くにあるはずだ。そう思いながら、私は大蛇の乗り心地を楽しむのであった。