Solyuの気まま日記

Solyuの思ったことや考えたことをまとめます

並行パズル邂逅記 第2章

2.    解き難き牙城


「では、先ほどのお城に戻りましょう。城内散歩も楽しいですよ」
デコの後ろを着いていくと、そこには大きな門があった。目覚めたときにいた場所の、入口らしい。
早速中に入ると、大きな庭園が待ち受けていた。
「沢山の石像が並んでいるのが見えますか?あちら全部、兵隊の形をしているのです」
白と黒と灰色の石像が、あちこちに並んでいる。兵隊の向きはまちまちで、一貫性があるようには思えない。
いや、待て……白と黒、向きを持った石像。見たことが有るパズルかもしれない……
「もしかして、こちらに見覚えが有りますか?」
ひとまず、あの石像の下に行ってみよう。もし予想が正しければ、このパズルはあの場所を上手く歩くことで解けるはずだ。

石像の下に辿り着いて、私は兵隊の胸元に☆が幾つか飾られているのを見つける。想像はしていた。この星は数字と対応するのだろう。そう、Castle Wallに有るように。

 

Castle Wallとは、盤面に1つのループを描くパズルである。
手掛かりのマスは白黒でループの内外を表す。白が内、黒が外、灰色はどちらでも良い。
また、矢印と数字でその方向に伸びているループの線分の長さを表す。

 

さて、この石像を見てみよう。色は恐らく白。――白?私は自分の立ち位置を確認する。
有り得ない。ここは一番外周のはずだ。ループの内側にはなり得ない。
考え直そうと、私は一度外に出て、盤面を良く眺める。すると、更におかしな点が出てきた。
Castle Wallにはない+マークが、地面に記されてあったのだ。
「お客様、只今到着しました……急に走って行かれましたが、どうかされましたか?」
似たパズルと勘違いして、と答える。四隅に切れといい、どうも今日は勘が冴えない様だ。
「お客様、差し支えなければそのパズル名をお教え下さると――」
Castle Wallと答えた瞬間、デコははっとした表情を見せた。
「名前が似ていますね。こちらのパズルは、Castle Walkerというものです」
やはりここは、デコの説明を仰ぐべきであろう。

《例題》

「では、説明させて頂きます。
ルール1:マスの中央を通るように縦横に線を引き、盤面に向きの付いた一つのループを描きます。
ルール2:ループは全ての記号を通り、また+記号でのみ必ず交差します。
+記号以外でループが自身と重なることはありません。
ルール3:四角の中の数字は、そのマスを通る辺の長さの合計を表します。
ここで、辺とはループの線のまっすぐな各成分を指します。
ルール4:四角の色は、そのマスでループが直進するか曲折するかを表します。
白なら直進、黒なら曲折します。灰色はどちらでも良いです。
ルール5:四角の中の矢印は、線が出る方向を表します。

盤面こそCastle Wallに似ているが、数字はGeradewegやリフレクトリンク、色はましゅに近いだろうか。独立なヒントが3種類もあるとは、風変わりなパズルもあるものだ。
「これでルールは全てです。では、ごゆっくりお楽しみ下さい」
私は再び、パズルの内部へと戻る。そこで、先程迄見逃していたことに気付く。
黒い石像が1つ、倒れ落ちていた。辛うじて星の数は見えたが、これでは方向が分からない。
――いや。わざと方向を分からなくさせているのだ。一部の手掛かりを?等にして伏せるのは、パズルには良くあることだ。

サイズからするに、これが例題なのだろう。解いてみよう……

Sample

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《例題の解答/解答のイメージ図》

 

解けた。解答の道順通りに歩き、ついでに倒れていた石像を向きだけでも揃えるように動かす。
1周したと思った直後、何処かでベルの音が鳴り響いた。
「このパズルは、音へと変わるようですね。どうでしょう、聞き心地は」
懐かしい響きのある曲だ。かつて良く聴いていた音楽というものは、ふと聴いてみると新しい発見を感じられる。あの頃と今との違いを、音が教えてくれるのだろう。
では、他の庭園のパズルを解けば、どんな音楽が流れるのだろう。忘れ去っていたものを、探しに行く旅へと行こう。

Q1

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Q2 《08/05公開》

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Q3 《08/06公開》

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最後の一曲が流れる。その曲は、郷愁という言葉が似合う穏やかな調べで、聞く人の心を癒す音だった。
「この世界にも、昔が有るのでしょうか。――こんな話を聞いたことが有ります」
デコはそう言って、不思議な出来事を話し始めた。
「かつて空の彼方より、この世界を覗き見る大きな窓が現れました。わずかな間でしたが、その期間にこの世界は急激に成長したのだそうです」
この城も、そのとき出来上がったものであるらしいとデコは言う。
「さて、次のパズルに向かいましょう。お客様の助けになるものが、有るかもしれません」
この城は、旅立つ者への手助けをするところなのです、そうデコは付け加える。何でも、窓を開け、この世界をこうして育ててくれた誰かのお礼であるのだと。
ベルの音が、未だ微かに空気を揺らしていた。