Solyuの気まま日記

Solyuの思ったことや考えたことをまとめます

並行パズル邂逅記 第6章

6.    虫の知らせが導く


私たちの旅は、一つの中継地点に着いたようだった。
蛇に別れを言い、デコと一緒に大きく手を振る。蛇は満足げに帰っていった。
眼前に広がるのは、赤や黄色に色鮮やかな森。
「あちらこちらで紅葉が見られますね。秋のようです」
ここでは季節の概念が曖昧らしい。思えば、城内庭園にも色んな季節の花が混在していた。ここにある時間らしきものは、昼と夜くらいだ。
そう、その夜がもうすぐ来ようとしていた。夕日が向こう側に見える。早いものだ。眠気がまるで追い付いていない。
ふと、私の目の前を何かが横切る。――蜂だ。デコの方をちらりと見やる。
「――はい、大丈夫です。害はありません。おそらく、この蜂さんもパズルなのでしょう」
デコの言う通り、この世界はまるで目に見えるもの全てがパズルのようだ。あまりにも大きすぎる、パズルの博物館がここにある。
さて、蜂とパズルといえば、有名なものが1つある。ハニーアイランドだ。

 

ハニーアイランドは、正六角形盤面上に黒マスを配置するパズルである。
盤面は一辺5の正六角形上の配置(計61マス)で固定され、そこに幾つか黒マスが予め置かれている。
上手く黒マスを埋め、白マス6つの領域を丁度6つ作るのがパズルの目標となる。
変形盤面を用いた中では、最も有名なパズルの1つに入る。大枠を感覚で決めた後、微調整を繰り返して解くという、他のパズルでは中々見られない解き方もできるのがこのパズルの醍醐味である。

 

では、この世界ではどんなパズルになるのか。私が蜂の行方を追った先には、同じ61マスの盤面に、黒マスではなく幾つかの数字が配置されていた。
「どれどれ……このパズルはハニーテリトリーと呼ぶらしいですね」
毎度のことだが、ルールの説明はデコに任せている。デコを介さなければ、私にはこの世界の文字が分からないからだ。加算コーナーの辺りで辛うじて数字は覚えたが、ルール文はとても読めない。

《例題》

ルール1:幾つかのマスを黒く塗り潰し、盤面を白マスの塊8つに分けます。8つの塊の面積は、それぞれ1,2,…,8となります。
ルール2:数字のマスは白マスとなり、そのマスを含む塊の面積を表します。また、?のマスは白マスとなります。このとき、面積は1~8のどれでも良いです。


久しぶりに、バリアントらしいものが来た。どうやら名前が似ていても、ルールが似るかは種類によって大きく異なるらしい。
「盤面が固定のパズルは、珍しいですね。心なしか、例題も大きく見えます」
その通りで、私はその見た目の大きさに戸惑う。しかしすぐに、表出されている数字が多く有ることに気付く。これによって難易度を調整しているのだろう。
旅の休憩時間には丁度良い。そう思い、私はそれらを解くことにした。

Sample

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《例題の解答/解答のイメージ図》

 

例題が解け、完成した盤面の上を蜂が舞った。何匹かの仲間が更にやってきて、出来上がった『巣』に留まる。すると蜂の止まったマスの内容が書き換わり、新たな問題が出来上がった。
蜂たちが満足するには、もう少しパズルを解かなければならないようだ。

 

Q1

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Q2 《08/17公開》

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Q3 《08/18公開》

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最後のパズルが完成し、個性豊かなハチの巣が出来上がった。先程の蜂たちは、目の前で八の字ダンスを踊ったあと、何かを思い出したように一直線に動き出した。
デコと共に、ハチの後を追う。そこには、一本の巨大な樹がそびえ立っていた。ゆさゆさと、頭上の葉が揺れ動く音がする。
「――もしかして!お客様、水を掬うように手をお出しください」
デコの言葉通りに手を出すと、真上から小さな球形のものが幾つか落ちてきた。
これは……飴玉だろうか。木から降ってくるものではないように思えるが、どういうことだろう。
「ハニーキャンディですね。きっと、パズルを解いて下さったお礼でしょう。とても甘くて美味しいですよ」
一粒を口の中に放り込むと、癒される味わいがした。甘い一時だった。