Solyuの気まま日記

Solyuの思ったことや考えたことをまとめます

並行パズル邂逅記 第7章

7.    夜空を照らす閃き


夜が訪れた。静寂の中、私は僅かな明かりを頼りにデコの地図を眺める。
辺りの暗さとは裏腹に、私の思考は眠気に覆われるどころか冴えるばかりだ。ずっとパズルを解いているが、思考はより鋭く磨かれている。
そして、眠気が来ないのはデコも同じであるらしい。地図を片手に、感慨深げに眺めている。
デコが眠らないのは、客である私が眠らないせいではないのか、と気になってデコに尋ねてみる。
「私は眠りません。お気になさらず」
気になって、質問を加えてみる。この世界では誰もがそうなのだろうか。
「ここの住人ですか……。いるとしたら、私と同じように、眠ることはないでしょう。
永い永い時を、そうやって生きているのです。時間感覚など、とうに失っております」
デコもそうだが、まだまだこの世界には不思議が多い。そして、なぜ自分がこの世界に迷い込んだのかも、分からないままだ。
私はため息をつき、夜空を見上げた。そこには色とりどりの星が輝いている。
――今までの経験のせいか、この星空さえパズルに見える。そう、星をモチーフとしたパズルが有るではないか。スターバトル、月か太陽、そして…天体ショー。

 

天体ショーは、盤面を幾つかの領域に分割するパズルである。
それぞれの領域は唯1つの星(=丸い点)を含み、星を中心に点対称の形となる。
パズルによっては、完成後に黒い星を含む領域だけ塗り潰すと、絵が出来ることも有る。
点対称と掛け合わせたユーモラスな名前と、追加のお絵かき要素から、人気度が高いパズルである。

 

古代の人は、星同士を線で結んで星座を作ったという。それを追体験するように、私は夜空を星々で区切っていく。その様子を、横からデコが興味深げに眺めてきた。
「お客様、何をしていらっしゃるのでしょう?」
私は天体ショーというパズルの話をした。すると、デコは夜空を見上げて呟く。
「――そう聞くと、この夜空も確かにパズルに見えてきます。
こちらは…対称星、そういう名前のようですね。只今、ルールを解読いたします」

デコは星空に絵を描くように、指を動かした。

《例題》

「読めました!確かに、天体ショーと似ていますね。

ルール1:マス目に沿って縦横に線を引き、盤面を幾つかの領域に分割します。
ルール2:どの領域も、最低2つの記号(=星)を含みます。
ルール3:どの領域も、その領域の記号配置を含めて点対称となります。


こちらの名前は、対称性と掛け合わせたということだろう。点対称な領域に区切ることと星がモチーフなことは似ているが、こちらは星が必ずしも領域の中心に位置せず、その配置から領域の中心がどこかを探さなければならない。

「あの星々が有る辺りが、例題のようですね。解いてみましょう」
星が銀河になる、壮大な物語の始まりだ。

 

《このパズルはPuzzle Squareへの登録の際に、細かいルール(どの銀河も穴が開かない)が追加されました。なお、問題の解答自体には影響しません。》

Sample

puzsq.logicpuzzle.app

 

 

 

 

《例題の解答/解答のイメージ図》

 

 

小さな一角が、銀河で区切られた。この調子で、近くにあるあの星空も銀河に分けられないだろうか。そう考えると、突然どこかの星が光った。
「次は、あの箇所なのでしょうか?」
デコの言葉通りだろう。私は視線を動かし、点滅した方の星空を眺めた。何処に線が引けるだろうか。

 

Q1

puzsq.logicpuzzle.app

Q2 《08/20公開》

puzsq.logicpuzzle.app

Q3 《08/21公開》

puzsq.logicpuzzle.app

 


全てのパズルを解き終えた。星々の輝きは1問解くごとに輝きを増し、夜には見合わない明るさを成している。そして、それらが急激に輝きだし、私は目を覆う。
目を開けると、そこにはもう星々の姿はなく、代わりに1つの大きな赤いほうき星が残っていた。それは夜空を引き裂くように真横へと突き進み、どこまでも落ちないように見える。
「彗星の道標でしょうか。追ってみましょう」
星の流れる方向へと、私たちは導かれる。夜の暗さは、一層濃くなっていた。