Solyuの気まま日記

Solyuの思ったことや考えたことをまとめます

並行パズル邂逅記 第8章

8.    目覚めの時が来る


どれくらい遠くへと来ただろうか。一日ぶりに、私は人工物らしきものを見た。
「この建物は、いったい何なのでしょうか……私たちを迎え入れているようですが、その理由は皆目見当もつきません」
彗星の導く先には、白く輝いた建物があった。扉が開け放たれており、誰でも自由に出入りできるようだ。
この建物についてデコに尋ねてみるが、どうやら向こうも知らないらしい。
「私もこの世界の全貌は分からないのです……とにかく広くて、見たこともないものだらけなのです。今見えている景色は、砂漠の中の1つの砂粒に過ぎません」
時間も空間も無限に引き延ばされたような世界。私は何故、この世界に迷い込んだのであろう。
この建物に、その手掛かりが有るかもしれない。意を決し、私は中へと入りこむ。
刹那、光が失われた。いや、所々にある照明だけがいまだ輝いている。しかし、もう外にあふれ出るほどの眩さは残されていない。
「お客様……やはりこちらも、パズルのようです」
このパズルもまた、よく知っているパズルに似た何かなのだろう。恐らく、そのテーマは光なのだろう、そう考えると1つ候補が浮上する。美術館だ。

 

美術館とは、盤面に幾つかの明かりを設置して、全てのマスを照らすパズルである。
照明は自身から縦横4方向を壁(=黒マス)に遮られるまで照らす。照明同士は照らし合ってはならない。
黒マスに数字が有る場合、そのマスに隣接する4マス中にある照明の数を表す。

 

解読の助けになると思い、デコに美術館というパズルについて説明する。
「興味深いパズルですね!おかげで、ルール文が解読できました。このパズルも、『月以外の』全マスを照らすことが目的のようです」
デコ曰く、このパズルの名前は美術回廊と呼ぶらしい。この建物の中央には不自然な穴が開いているが、そこに上手くオブジェを設置するのだそうだ。

《例題》


「では、お読み致します。

ルール1:幾つかのマスに鏡台を配置し、盤面内の月以外のマス全てに光が入るようにします。
ここで、鏡台とは直角二等辺三角形◢,◥,◤,◣のことです。
鏡台は斜めの辺でのみ光を反射し、他の2辺では光を吸収します。
ルール2:○は照明を表します。照明からは縦横4方向に光が放たれます。
照明から出た光が、自身や他の照明、月を照らしてはなりません。
ルール3:鏡台の入るマス同士は隣り合いません。また、記号を隠すように鏡台を配置してはなりません。
後述する三角片の記号のみ、その記号と重ならないように鏡台を配置できます。
ルール4:マス目に小さな三角片が有る場合、そのマスに入る光の道筋全てを表します。
即ち、三角片が有る方向からは必ず光が入り、無い方向からは光が入りません。
三角片も月も無いマスは、どのように光が入っても良いです。


聞く限り、キンコンカンのように鏡を配置するパズルのようだ。やはり特徴的なのは、鏡が片面であることだろうか。
私は建物の中を見回す。あのオブジェが月、あの床の模様が三角片、そして隅に沢山置かれているのが鏡台であろうか。これらを上手く配置すれば、この建物内は再び光で満ちるだろう。

 

Sample

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《例題の解答/解答のイメージ図》

 

最後の一枚を置き、私は外側の廊下へと戻る。例題が解けたことで、建物の入り口に光が取り戻された。かつて電球の発明により、夜にも光が溢れるようになったという。同じ様に、このパズルを解けばこの世界の夜も明るくなるのだろうか。

そう思っていると、突如床が光り、その模様が変わった。この美術館が美しさを取り戻すには、もう何段階か必要そうだ。

Q1

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Q2 《08/23公開》

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Q3 《08/24公開》

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「凄いですね。夜空に光が溢れていきます……」
デコがため息交じりに語る。解き終えたパズルから光が解き放たれ、辺りを照らし回っている。その光景は、さながら朝のようだ。
――そう思ったとき、突如建物が輝きを増し、それは球状になる。そして遠ざかり、輝きは増したまま小さくなったかと思うと……それは空に張り付き、大きな星となった。いや、これは星というより……
「――日の出です。こんな小さな建物に、太陽が隠れていたのですね」
ついに、この世界に朝が来た。これから、この世界はどう変わるのだろう。